コラム
COLUMN in a monthly

ビジネスに活かす
メンタルトレーニング

本稿は自動車雑誌連載記事です。

第3回 不安や恐怖心を取り除く
       メンタルテクニック

 前回から、もっともメンタルなスポーツだといわれているゴルフを例にして、さまざまなメンタルテクニックの説明をしています。どのメンタルテクニックも、ゴルフばかりでなく仕事や生活のあらゆる場面で使えるものですので、そうした応用を考えながら読んでいただければ幸いです。

 ゴルフには、不安や恐怖心がつきものです。「みんなが見ている前でチョロだったらどうしようか」とか、「あのバンカーにつかまったら、一発ではとても出そうもないな」といった具合にゴルファーは一つひとつのショットにあれこれと思い悩みます。こんな思いが体を硬直させ、ミスショットの原因になることは誰もがよくわかっているはずです。しかし、心の中にすむ恐怖心という怪物は、なかなか鎮まってはくれません。ところがこの怪物をうまく手なずけると、一転して力強い味方にもなってくれるのです。

 プロボクシングの名トレーナーとして有名な故カス・ダマトは、フロイド・パターソン、ジョー・卜ーレス、マイク・タイソンといった歴代の世界チャンピオンを育て上げました。特にマイク・タイソンは、ダマトによって見いだされ、極貧の不良少年から一気に世界の頂点に立つことに成功しました。しかし、ダマトの死によって、彼のボクシング人生が大きく暗転してしまったことは、みなさんもよくご承知のとおりです。そんな名トレーナーだったダマトが、恐怖心について次のような言葉を残しています。
 「一流のボクサーほど、試合の何ヶ月も前からゴングが鳴るまで怖がっているもんさ。怖いから練習するんだよ。ところが三流の奴ときたら、ゴングが鳴るまでは平気な顔していてろくな練習もしやしない。それが始まったとたんにガタガタ震えるんだから勝てるわけがないさ。ボクサーにとって恐怖心は、ちょうど人間にとっての火がそうであるように、ある時はすばらしい友達であり、またある時には最悪の敵でもある。火をうまくコントロールすることによって、われわれ人間は食や暖をとることができるようになった。ところがひとたび火の扱いをまちがえて暴れさせてしまうと、火は全てを焼き払い、われわれを滅ぼしてしまう。これと同じように、ボクサーが恐怖心をうまくコントロールできれば、すばらしいファイトができるようになるにちがいない」。
 さてそれでは、いったいどのようにしたら恐怖心をうまくコントロールすることができるのでしょうか。ゴルフのショットを例にして、恐怖心を手なずけるメンタルテクニックをご紹介することにしましょう。

 いざショットを打とうとして、心の中に不安がよぎると、たいていの人はその不安を口に出すか、あるいは人にはほとんど聞こえないようにつぶやくものです。例えば、「左にひっかけてOBになったら嫌だな」とか、「バンカーから出なかったらどうしよう」といった具合です。
 面白いことに、こうしたマイナスの言葉を言えば言うほど、それが現実になる確率は高くなります。その結果、「ああ、やっぱり……」とか、「そらみろ、やっぱり言ったとおりだ」ということになってしまうのです。
 こうした言葉のほとんどはネガティブワード、つまりまだ打ってもいないミスショットを暗示するようなものばかりのはずです。
 ショットの直前にこんなマイナスな言葉をつぶやいている自分に気づいたら、必ずいったん仕切り直してください。具体的にはアドレスをとき、深呼吸を二度ほどしてから、「左にOBしたくない」というネガティブワードを、「フェアウェイセンターやや右に打っていこう」とポジティブな独り言に言い替えるのです。
 一見なんでもなさそうなことですが、実際やってみると難しいものです。しかし、こうしたことも意識して練習していくうちに、少しずつうまくできるようになります。そして意識もせずにこのテクニックが使えるようになると、愚かな大叩き癖が陰をひそめ、知らないうちに4つも5つもスコアが縮まっていることでしょう。

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