コラム
COLUMN in a monthly

ビジネスに活かす
メンタルトレーニング

本稿は自動車雑誌連載記事です。

第9回 正しい立ち方歩き方 その1

 直立二足歩行は、人間と動物とを区別する第一の指標です。しかし、生命誕生から現在に至る長い時間から見れば、その歴史はほんのまばたきする程度の長さでしかありません。このことをもっとわかりやすくするために、地球上に生命が誕生した30数億年前を零時として現在を24時とする、生命時計という考え方を使ってみましょう。
 この生命時計によれば、単細胞の生命体から長い年月をかけて爬虫類や両生類などが誕生したのは、今からわずかに2時間前ということになります。さらに恐竜の時代を過ぎて、ほ乳類の中の、ある種が二本足で立つようになったわけです。これが猿人と呼ばれるアウストラロピテクス類ですが、この発生は今から2分前です。そしてピテカントロプス類(原人)に至ってようやく人類が誕生するのですが、その発生は地球上に展開された長い生命の歴史から見れば、今からたった1分前でしかないということになってしまいます。直立し二足歩行することによって両手は自由になり、脳も飛躍的に発達していきます。このように二足歩行によってもたらされた動きの自由度と脳の発達が、その後の人類の驚異的な発展をもたらすことになるのはよく知られるとおりです。
 さて、生命時計ではわずか1分とは言っても、私たちの直接的な先祖であるピテカントロプス類が2本の足で地上を歩き始めてから、すでに50万年以上が経過しています。つまり、人間の行う運動のどれをとっても、頭を天、足を地に向けた直立位を基本として行われるわけです。それでは、いったいどんな立ち方をすれば良いのかということになります。

 スポーツに限らず武道や芸道の世界でも、一流といわれる人は「立ち姿」が美しいものです。さらにそういう人は立ち姿ばかりでなく、歩いていても座っていてもどこかピンときまっています。つまりその一挙手一投足がすべて美しいわけです。私もそうしたことには以前から何となく気づいていたのですが、どうしてそうなのかというはっきりした答えを持つことができずにいました。

 ところがいまから二十数年前に、体操競技のロシアのナショナルヘッドコーチであったラズモフスキー夫妻から、旧ソ連のトレーニング方法について教えてもらったときに、ハッと気づくことがありました。
 1993年に日本体操協会は、日本の女子選手の競技力向上をめざして彼らをコーチとして招聘しました。ラズモフスキー夫妻はすぐに日本ナショナルチームの指導に着手したのですが、彼らがまっさきに指摘したのは、選手の姿勢面の欠点だったのです。
 そのとき彼らがたえず選手に要求したのが、まっすぐな美しい姿勢です。そしてロシアでは、そのような姿勢を「ベリョースカ=白樺のポーズ」と呼ぶということでした。風雪が吹きすさぶ真っ白なシベリアの平原に、スッーとまっすぐ伸びている白樺の木に対して、ロシアの人たちは最高の美しさを感じるというわけです。

 それではどうすればそのようなまっすぐな姿勢がとれるのでしょうか。それは股関節の使い方に秘密があります。具体的なやり方を、もっとも基本的な直立姿勢で説明してみましょう。
 両足で直立したら、何かにつかまってもいいですから、両方の足先をかかとを中心にして180度開きます。こうすると股関節が外側に開いて、それによって上半身と下半身が腰のところでジョイントされ、まっすぐに立つことができます。運動美の極致ともいうべきクラシックバレエには、もっとも基本となる5つの姿勢がありますが、そのうちの「一番ポジション」と呼ばれる姿勢がこの立ち方なのです。
 この白樺のポーズの詳しい仕組みについては次回で述べますが、ともあれこの姿勢を1回30秒、折に触れてやってみていただきたいと思います。すると次回を読んでいただくころには、みなさんの立ち振る舞いが、すっきり颯爽としたものに変わっていると思うのですが、いかがでしょうか。

コラム一覧

連載「ビジネスに活かすメンタルトレーニング」
  • 講演録・イベントレポート
  • PAGE TOP

    c2013 Yutaka SHIRAISHI