コラム
COLUMN in a monthly

ビジネスに活かす
メンタルトレーニング

本稿は自動車雑誌連載記事です。

第16回 プレッシャーと
       どう戦うか その1

 わたしたちは試合や試験、大勢を前にしたプレゼンテーションなどの場面に立たされると、プレッシャーを感じて緊張してしまいがちです。そして実力の半分も出せないまま終わってしまうことがよくあります。
 ところが反対に、プレッシャーがかかればかかるほど、それを上手にエネルギーに転換して、普段では考えられないような良い成績を出してしまう人もいます。この違いはいったい何なのでしょうか。何事かをやろうとすれば、そしてそれが大きな成果につながるものであればあるほど、プレッシャーもまた大きくなります。

 荘子の一節に、「賭けられるものが、かわらならば、無価値であるから神技を発揮するが、おびがねを賭けると心配し、さらに黄金を賭けると、心の平静は乱れてしまい、巧みさが同じでも、心が外から圧迫されて拙くなる」とあります。荘子の生きた2千数百年前も21世紀の今も、心の問題は少しも変わらないようです。

 さて、それではわたしたちの心をかき乱すプレッシャーに、どう対処していったらよいのでしょうか。
 プレッシャーコントロールの第1ステップは、プレッシャーの正体を見極めるところから始まります。プレッシャーには、外からものと内からのものの二つがあります。
 外からのプレッシャーとは、次のようなものです。
 場所の違い、移動、施設の違い、天気、気温、交通機関の乱れ、ライバル、観衆、報酬、評価などです。
 これに対して、内側から生じるプレッシャーとは、成功への期待、失敗不安、自信の欠如など、自分の心がつくり出すものです。
 この二通りのプレッシャーの中で、自分ではコントロールできないものがあります。外からのプレッシャーです。試合場や試験場は自分で選ぶことができません。暑さ、寒さ、雨、風などこうした自然現象もどうにもなりません。
 コントロールできないことにじたばたしても仕方がないのです。ところが、それができずに自滅していく人のなんと多いことでしょう。プロのレベルでさえ、「暑くて辛い」、「風が強くて嫌だ」と試合の始まる前から、ぶつぶつ文句を言う人がけっこういます。これでは勝敗は見えています。

 では、どうするか。プレッシャーを感じたら、これは外か内か、どちらのプレッシャーなのかをまず冷静に見極めます。そしてそれが外だとわかったら、素直に受け入れるのです。風が強いのも暑いのも、みんな同じなのですから。関西風に言えば、「みんな、一緒やないか」とまあ、こんな風につぶやけるようだと、かなりうまく対処できていることになります。
 もっとうまくやりたければ、こうしてみてください。ただ受け入れるだけではなく、もっと積極的にその状況を好きになろうとするのです。具体的には、「風が強くて嫌だ」から、まず「風が強いのはみんな一緒」、さらに「この強風を利用してプレイしてやろう」といった具合です。
 目に見えないプレッシャーにただおびえるのではなく、まずこうしてその正体を見極めてみてください。「幽霊の正体見たり、枯れ尾花」とは、まさにこのことです。

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